打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点 (実態調査報告書のまとめ)

第1 はじめに

一般消費者に対して、商品・サービスの内容や取引条件について訴求するいわゆる強調表示1は、それが事実に反するものでない限り何ら問題となるものではない。ただし、強調表示1は、対象商品・サービスの全てについて、無条件、無制約に当てはまるものと一般消費者に受け止められるため、仮に例外などがあるときは、その旨の表示(いわゆる打消し表示2)を分かりやすく適切に行わなければ、その強調表示は、一般消費者に誤認され、不当表示として不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)上問題となるおそれがある。
強調表示と打消し表示との関係は、強調表示の訴求している内容が商品・サービスの実際を反映していることが原則であり、打消し表示は、強調表示だけでは一般消費者が認識できない例外条件、制約条件等がある場合に例外的に使用されるべきものである。したがって、強調表示と打消し表示とが矛盾するような場合は、一般消費者に誤認され、景品表示法上問題となるおそれがある。
また、例えば、打消し表示の文字が小さい場合や、打消し表示の配置場所が強調表示から離れている場合、打消し表示が表示されている時間が短い場合等、打消し表示の表示方法に問題がある場合、一般消費者は打消し表示に気付くことができないか、打消し表示を読み終えることができない。また、打消し表示の表示内容に問題がある場合、一般消費者は打消し表示を読んでもその内容を理解できない。
このように、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないことにより、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの又は競争事業者に係るもの(以下「実際のもの等」という。)よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される場合、景品表示法上問題となるおそれがある。ここでいう「著しく」とは、当該表示の誇張の程度が、社会一般に許容される程度を超えて、一般消費者による商品・サービスの選択に影響を与える場合を指す。
そこで、(ⅰ)「打消し表示に関する実態調査」(平成28年10月~平成 29年3月。平成29年7月に消費者庁において公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」の基礎となった調査。以下「打消し表示の実態調査」という。)、(ⅱ)「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査」(平成29年10月2日~平成30年2月28日。平成30年5月に消費者庁において公表した「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」の基礎となった調査。)及び(ⅲ)「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査」(平成29年11月30日~平成30日2月28日。平成30年6月に消費者庁において公表した「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」の基礎となった調査。以下「視線調査」という。)を基に、①打消し表示の表示方法、②打消し表示の表示内容及び③体験談を用いる場合の打消し表示に分けて、景品表示法上の基本的な考え方及び適切な表示に向けての留意点を示す。

1 事業者が、自己の販売する商品・サービスを一般消費者に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示
2 強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示

第2 打消し表示の表示方法について

1 基本的な考え方

打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるように適切な表示方法で表示されているか否かについては、打消し表示の文字の大きさ、配置箇所、色等から総合的に判断されるところ、この判断に当たっては、全ての媒体に共通する要素とともに、各媒体で特徴的な要素についても留意する必要がある。
打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるような適切な表示方法で表示されているか否かは以下の要素等から総合的に判断される。

〈要素〉
・ 打消し表示の文字の大きさ
・ 強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
・ 打消し表示の配置箇所
・ 打消し表示と背景の区別
・ 【動画広告】打消し表示が含まれる画面の表示時間
・ 【動画広告】音声等による表示の方法
・ 【動画広告】強調表示と打消し表示が別の画面に表示されているか
・ 【動画広告】複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか
・ 【Web 広告(PC)】強調表示と打消し表示が1スクロール以上離れているか
・ 【Web 広告(スマートフォン)】アコーディオンパネルに打消し表示が表示されているか
・ 【Web 広告(スマートフォン)】コンバージョンボタンの配置箇所
・ 【Web 広告(スマートフォン)】スマートフォンにおける強調表示と打消し表示の距離
・ 【Web 広告(スマートフォン)】スマートフォンにおける打消し表示の文字の大きさ
・ 【Web 広告(スマートフォン)】スマートフォンにおける打消し表示の文字とその背景の色や模様
・ 【Web 広告(スマートフォン)】他の画像等に注意が引きつけられるか

2 問題となる打消し表示の表示方法

⑴ 全ての媒体に共通して問題となる表示方法
紙面広告、動画広告及び Web 広告(PC 及びスマートフォン)の全ての表示物について、打消し表示の内容が一般消費者に正しく認識されるためには、以下に記載している要素のそれぞれについて留意する必要がある。
ア 打消し表示の文字の大きさ
打消し表示に関する実態調査の結果を踏まえると、打消し表示の文字の大きさは、一般消費者に打消し表示が認識されない大きな理由の1つであると考えられる。
そのため、例えば、一般消費者が打消し表示を見落としてしまうほど文字が小さい場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

○求められる表示方法
事業者が打消し表示を行う際には、一般消費者が手にとって見るような表示物なのか 、鉄道の駅構内のポスター等の一般消費者が離れた場所から目にする表示物なのかなど、表示物の媒体ごとの特徴も踏まえた上で、それらの表示物を一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示する必要がある。

イ 強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように文字の大きさのバランスに配慮する必要があり、打消し表示の文字の大きさが強調表示の文字の大きさに比べて著しく小さい場合、一般消費者は、印象の強い強調表示に注意が向き、打消し表示に気付くことができないときがあると考えられる。そのため、例えば、打消し表示が強調表示の近くに表示されていたとしても、強調表示が大きな文字で表示されているのに対して、打消し表示が小さな文字で表示されており、強調表示を見た一般消費者が当該強調表示に対する打消し表示に気付くことができないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

ウ 打消し表示の配置箇所
打消し表示は、一般消費者が、それが強調表示に対する打消し表示であると認識できるように表示する必要があるため、打消し表示の配置箇所は、打消し表示であると認識されるようにするための非常に重要な要素である。
打消し表示の配置箇所に問題があるか否かを判断する際は、(i)強調表示と打消し表示がどの程度離れているのかという点に加えて、(ⅱ)強調表示と打消し表示のそれぞれの文字の大きさ等も勘案される。
そのため、例えば、打消し表示の文字の大きさが、一般消費者が見落としてしまうほど小さくない場合であったとしても、打消し表示が強調表示から離れた場所に表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であることを認識できないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

エ 打消し表示と背景との区別
打消し表示の文字の色と背景の色が対照的でない場合(例えば、明るい水色、オレンジ色、黄色の背景に、白の文字で打消し表示を行った場合)など、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合には、一般消費者は打消し表示に気付かないおそれがある。
打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいか否かを判断する際は、(ⅰ)背景の色と打消し表示の文字の色との組合せ(例えば、白の背景に、黒の文字で打消し表示を行った場合には打消し表示が目立つのに対し、打消し表示の文字の色と背景の色が対照的でない場合は打消し表示が見にくい。)に加えて、(ⅱ)打消し表示の背景の模様等も勘案される。
そのため、例えば、打消し表示の背景が無地の単色ではなく、複数の色彩が入り組んでおり、打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

⑵ 紙面広告において問題となる表示方法

打消し表示の実態調査の報告書で示しているように、打消し表示が強調表示から離れた箇所に表示されており、一般消費者が打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合や、打消し表示が強調表示の近くに表示されていたとしても、強調表示が大きな文字で表示されているのに対して、打消し表示が小さな文字で表示されており、強調表示を見た一般消費者が当該強調表示に対する打消し表示に気付くことができないような場合等、一般消費者が強調表示と打消し表示を一体として認識できない場合には、景品表示法上問題となるおそれがある。
視線調査の結果、紙面広告を閲覧する一般消費者は、動画広告(Web サイトに掲載されているような場合を除く。)のように閲覧する際に時間的な制約がなく、能動的に見ることができるにもかかわらず、強調表示に注意を向けた場合に、当該強調表示から離れた箇所には注意が向かない可能性があり、強調表示から離れた箇所に表示された打消し表示については認識されにくい傾向があることが判明した。
このことから、打消し表示が強調表示から離れた箇所に表示されている場合、強調表示に隣接した箇所に、離れた箇所に打消し表示があることが認識できるような記述や記号などがないときは、一般消費者が打消し表示の内容を認識できないおそれがあることに留意する必要がある。特に、(紙面広告の隅に掲載されており、)小さい文字だけで構成された注意書きが一括して表示されている箇所は、一般消費者の注意が向かない可能性があることも視線調査において判明した。このことから、打消し表示をこのような表示のみで行うことは強調表示に関して一般消費者の誤認を招くおそれがあることに留意し、強調表示と打消し表示を一体として認識できるように表示する必要がある。
また、紙面広告では様々な情報が盛り込まれている一方、多くの情報の中から、必要な情報を関連付けて読むという行動が取られにくく、さらに、特に強調した表示を行っている箇所を中心によく見るという行動が取られることも視線調査で判明した。
視線調査結果から、打消し表示の内容を理解するために他の情報と関連付けて理解する必要がある場合であって、打消し表示とそれも関連する情報が一体として認識できるように表示されていないときは、一般消費者が打消し表示の内容を認識できないおそれがあることに留意する必要がある。
さらに、視線調査で明らかになったように、打消し表示が強調表示に隣接した箇所に表示されている場合であっても、強調表示と文字のバランスが著しく悪いような小さな文字で表示されていたり、強調表示と違う字体や色で表示されていたり、打消し表示の背景が強調表示の背景と異なっていたりするときは、一般消費者が強調表示と打消し表示を一体として認識できないおそれがあることにも留意する必要がある。
これらのことからすると、打消し表示は、強調表示に隣接した箇所に表示した上で、文字の大きさのバランス、色、背景等から一般消費者が両者を一体として認識できるよう表示することが求められる。また、打消し表示の文脈において、強調表示との関係性がよく理解できるように、その表現振りにも工夫することも求められる。

⑶ 動画広告において問題となる表示方法

動画広告は①表示されている時間が限られる、②文字以外の音声等の要素にも視聴者の注意が引きつけられる、③画面が切り替わるたびに新しい情報が提示される、④映像と音声の組み合わせにより、視聴者に強い印象を残す、⑤情報が次々と映し出されては消え、手元に表示が残らない等の特徴がある。
したがって、動画広告については、打消し表示の内容が一般消費者に正しく認識されるためには、前記⑴に記載している要素と共に、以下に記載している要素についてもそれぞれ留意する必要がある。

ア 打消し表示が含まれる画面の表示時間
打消し表示の実態調査の結果を踏まえると、打消し表示が含まれる画面の表示時間は、一般消費者が特に動画広告において打消し表示を読まない大きな理由の1つであると考えられる。
たとえ、静止画の場合には一般消費者が打消し表示に気付くことができるように打消し表示が表示されていたとしても、打消し表示が含まれる画面の表示時間が短い場合、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、表示時間内に打消し表示の内容を読み終えることができないことがある。
実際に一般消費者が動画広告を視聴する状況においては、画面の外にも注意を向けている状態で動画広告を視聴する場合があったり、画面に表示された文字を読むのが面倒だと感じる者もいるなど、一般消費者は打消し表示の文言を常に注視しているとはいえないと考えられる。このことから、たとえ、打消し表示を注視した際には打消し表示が表示されている時間内に読み終えることができたとしても、実際に一般消費者が動画広告を視聴する状況において打消し表示を読み終えることができないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。
打消し表示が含まれる画面の表示時間が適切であるか否かを判断する際は、(ⅰ)打消し表示が含まれる画面の表示されている時間がどれ位かという点に加えて、(ⅱ)当該画面内に含まれている強調表示や打消し表示の文字数等も勘案される。
そのため、例えば、(ⅰ)打消し表示が含まれる画面の表示されている時間が短く、強調表示を読んでいるだけで画面が切り替わってしまうような場合(すなわち、打消し表示を読む時間が全くない場合)や、(ⅱ)強調表示と打消し表示の文字量が多く、打消し表示を読んでいる途中で画面が切り替わってしまうような場合(すなわち、打消し表示の表示されている時間内に打消し表示を読み終えることができない場合)、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

イ 強調表示と打消し表示が別の画面に表示されるか
動画広告において、打消し表示が強調表示とは別の画面に表示されている場合、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、別の画面に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないときがあると考えられる。
そのため、例えば、強調表示が表示された後、画面が切り替わって、直後の画面に打消し表示が表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、別の画面に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

ウ 音声等による表示の方法
動画広告における情報伝達の手段として、音声は重要な役割を果たしている。強調表示が音声により強調されている一方、打消し表示が音声により表示されていない場合、一般消費者は、音声により強調された表示に注意が向き、打消し表示に注意が向かないと考えられる。
そのため、例えば、文字と音声の両方で表示された強調表示に一般消費者の注意が向けられ、文字のみで表示された打消し表示に一般消費者の注意が向かないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
また、動画広告では、画面に現れた人物等の部分に一般消費者の注意が向けられ、同一画面内に表示された打消し表示に一般消費者の注意が向かない場合があると考えられる。
そのため、例えば、打消し表示と同一画面内に表示された人物等の部分に一般消費者の注意が向けられ、打消し表示に注意が向かないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

エ 複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか
動画広告において、同一画面に強調表示と打消し表示が表示されており、当該画面が表示されている時間内に打消し表示を認識できる場合であっても、複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するときは、動画中の情報量が多いために1回見るだけでは全ての打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。このような場合として、例えば、一般消費者が動画広告の最初の方に表示された打消し表示に気付いたが、動画中の情報量が多いために、動画広告の途中で打消し表示の内容を忘れてしまうような場合や、あるいは、動画広告の最初の方に表示された打消し表示の内容について考えているうちに、後に表示された打消し表示に注意が向かないような場合が考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
動画広告の複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場する場合、全ての打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるか否かを判断する際は、一つ一つの打消し表示の表示されている時間や表示の方法、強調表示と打消し表示が同一画面に表示されているか否かという点に加えて、打消し表示が動画広告に登場する回数や、強調表示や打消し表示についての文字や音声等の情報量等も勘案される。

オ 視線調査を踏まえた短時間の動画広告における留意点
動画広告を視聴する一般消費者は、次々と切り替わる文字、音声、画像等のうち、限られた時間の中で注意を向けた表示の内容を認識する。画面が表示された時間に一般消費者が認識できる情報の量には制約があり、さらに、注意を引き付ける表示は強い印象を残す一方、他の表示はすぐに消えて印象に残らない。
打消し表示の実態調査の報告書では、動画広告において、前記ア~エのように打消し表示を表示することにより、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあるとの考え方を示している。
視線調査では、短時間の表示画面において、文字と音声が同じ内容を 表示している場合、文字と音声が別の内容を表示しているときと比べて、表示の内容が認識されやすい傾向がみられた。
また、この場合であっても注意を引き付ける商品画像等が表示されているときは、音声が流れる間に画像の方に視線が停留し、文字の表示の内容を認識できない可能性があることが示された。
これらの結果及び打消し表示の実態調査で示した考え方を踏まえ、動画広告に関する景品表示法上の考え方を改めて整理すると、一般消費者の注意を引き付けるような画像、音声、その他目立つ表示と共に、商品・サービスの選択にとって重要な内容の打消し表示が表示されており、画面の表示されている時間内に、当該打消し表示に一般消費者の注意が向かないような場合は、景品表示法上問題となるおそれがある。

動画広告において、商品・サービスの選択にとって重要な内容を表示する場合には、例えば、文字と音声で同じ内容を表示するとともに、当該表示の内容だけに一般消費者が注意を向けられるように、他の情報を同一画面に含めないようにすることが求められる。
このことを踏まえた上で、複数の情報を画面に表示する際に留意すべきことについて、表示画面の類型に即して整理すると、以下のとおりである。

(ア) 複数の文字の表示がある場合
視線調査結果によると、複数の文字情報がある画面において、①文字と音声の表示は注意を引き付けやすいのに対し、文字のみの表示は注意が向きにくい傾向がみられる3。また、②文字が大きいなど目立つように表示された文字の表示は注意を引き付けやすいのに対し、それと比べて小さな文字で目立たないように画面の隅などに表示された文字の表示は注意が向きにくい傾向がみられる4
これらの注意が向きにくい文字の表示に視線が停留するまでに時間がかかる場合、画面に表示されている残りの時間で、一般消費者が当該表示の内容を認識できないおそれがあることに留意する必要がある。

○求められる表示方法に向けて
複数の文字情報がある画面において、一部の文字の内容が、音声で流れたり、大きな目立つ文字で強調されていたりする場合であって、他の文字の内容に商品・サービスの選択にとって重要な内容が含まれるときは、その内容を音声も用いて表示することや、強調された文字に隣接した箇所に、同程度の文字の大きさでその内容も表示することを検討すべきである。

(イ) 画像を表示する場合
商品・サービスの選択に重要な表示する際に、当該表示の他に長時間視線が停留するような画像等を配置することは当該表示の内容の認識を妨げる可能性があることに留意する必要がある。
このことを踏まえた上で、画面に画像を表示する場合に、ア 文字の内容を音声でも流すとき、イ 文字の内容とは異なる内容を音声で流すとき、ウ 複数の文字情報のうち、一部の文字の内容を音声で流すときについて、それぞれ以下の点に留意する必要がある。

3 この点について、認知心理学の観点から、作業記憶の内容に一致したものが視覚呈示されると、そこに注意が自動的に向けられてしまうということがいわれている。このことから、音声によって文字の内容を認識していた者は、同じ内容が表示された画面の文字に注意を引き付けられることがいえる。
4 この点について、認知心理学の観点から、一般的に大きな文字等目立つ文字から先に注意が向けられ、読まれやすいことがいわれている(大局優位効果)。

a 文字の表示の内容を音声でも流すとき
視線調査結果によると、画像と文字が含まれた画面において、文字の内容が音声で流れる場合、音声によって画面の文字に注意を引き付けられることで、音声が流れている間、文字と音声の表示に注意が向くことで、文字と音声の当該表示の内容が認識される傾向がみられる。
この場合であっても、画面に注意を引き付ける文字ではなく商品等の画像に注意が向くことで、文字と音声の表示の内容が認識されないことがある。この場合、文字ではなく画像に視線が停留していたとしても、音声から当該表示の内容を認識する可能性があるが、視線調査では、音声が流れている間、文字の方に注意を向けていた可能性が高い者が、より当該表示の内容を認識している傾向がみられた。

○求められる表示方法
このことからすれば、商品・サービスの選択にとって重要な文字の内容を音声で流す場合であっても、注意を引き付けるような画像を同一画面に表示するときは、文字の方にも注意が向くように、目立つ文字の大きさや色で表示すべきである。

b 文字の内容とは異なる内容を音声で流すとき
視線調査結果によると、画像と文字が含まれた画面において、当該文字の内容とは異なる内容が音声で流れる場合、画像や音声の方に注意が引き付けられることによって、当該文字のみの表示の内容が認識されない可能性があると考えられる。
視線調査では、文字のみの表示が、一般消費者にとって気付くことができる程度の文字の大きさであったが、画面の中央に目立つように表示された印象の強い商品画像に注意が引き付けられ、当該文字に視線が停留しなかったり、視線停留時間が短かったりして、当該文字の内容を相当数の者が認識していなかった。
この他に、文字に一定時間視線が停留していたにもかかわらず、当該文字の内容を認識していない場合もみられたが、この場合、当該文字の内容とは異なる内容の音声に注意が引き付けられ、当該文字の内容を認識できなかった可能性があることも想定される。

○求められる表示方法
これらのことから、画像と文字が含まれた画面において、当該文字の内容とは異なる内容が音声で流れる場合、文字の内容に商品・サービスの選択にとって重要な内容が含まれるときは、一般消費者が文字に気付くことができるように表示するだけでなく、他の音声や画像に注意が引き付けられることによって、当該文字に注意が向かないことがないように、重要な文字の内容は音声も用いて表示すべきである。

c 複数の文字情報がある画面で、一部の内容を音声で流すとき
視線調査結果によると、複数の文字情報がある画面において、文字と音声の表示は、文字のみの表示と比べて注意を引き付けやすい傾向がみられる。
また、前記b「文字の内容とは異なる内容を音声で流すとき」の画面についていえるように、文字の表示の内容が一般消費者に認識されるためには、当該文字に気付くことができるように表示するだけでなく、他の音声や画像によって当該文字の印象が薄れることがないように留意すべきである。
視線調査では、複数の文字情報がある画面において、一部の文字の内容だけが音声で流れて、さらに注意を引き付ける画像が表示されている場合、文字と音声の表示の内容は認識する者がいたのに対し、文字のみの表示には視線が停留しなかったり、視線停留時間が短かったりして、ほとんどの者が文字のみの表示の内容を認識していなかった。さらに、この場合、複数の文字情報が同じ文字の大きさで表示されているときであっても、文字のみの表示の内容は1人も認識していなかった。
これらのことからすれば、複数の文字情報がある画面において、一部の文字の内容だけが音声で流れて、さらに注意を引き付ける画像が表示されている場合、一般消費者が文字のみの表示の内容を認識できないおそれがあることに留意する必要がある。

○求められる表示方法に向けて
複数の文字情報がある画面において、一部の文字の内容だけが音声で流れて、さらに注意を引き付ける画像が表示されている場合、文字の内容に商品・サービスの選択にとって重要な内容が含まれる ときは、その内容を音声も用いて表示することを検討すべきである。

カ 視線調査を踏まえた長時間の動画広告における留意点
視線調査では、長時間の動画広告においても、短時間の動画広告と同様に、文字と音声が同じ内容を表示している場合、表示の内容が認識されやすいことや、注意を引き付ける画像等が表示の認識を妨げるときがあることが示された。
ただし、画面が切り替わるたびに次々と情報が表示され、手元に表示が残らない長時間の動画広告では、表示される情報の量が多くなると、
①別の画面の表示内容に注意が引きつけられ、その時点で見ている画面の表示内容に注意が向かないことや、②様々な情報を関連付けて理解することが困難になることがある。
また、たとえ、画面に表示されている時間に、当該画面の表示の内容を認識できたとしても、複数の画面に様々な条件が次々と表示されることによって、画面を見ている間に認識していた内容に関する記憶が失われてしまうことがある。
この点について、視線調査では、文字の表示と同じ内容が音声で表示 されている場合、当該文字の表示の内容が音声だけでなく人物の動きによっても強調されているときや、画面の表示されている時間が長く、文字と音声で表示された内容以外の情報が画面に表示されていないときは、より表示の内容が記憶に残りやすかった可能性があると考えられる。

⑷ Web 広告(PC)において問題となる表示方法

Web 広告は①スクロールしないと画面全体を確認できない場合がある、
②情報を読む際に時間制限がない、③提供できる文字数に制限がない等の特徴がある。
このうち、画面のスクロールについては、打消し表示の実態調査において、スクロールが必要な場所に表示された打消し表示は、同一画面内に表示された打消し表示よりも、一般消費者が見ない(読まない)傾向がみられた。
打消し表示が、強調表示が表示されている位置からスクロールが必要な 場所に表示されている場合、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、別の画面に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないときがあると考えられる。
1スクロール以上離れた場所に表示された打消し表示を一般消費者が認識できるか否かを判断する際は、(ⅰ)強調表示の前後の文脈や強調表示の近くにある記号等から一般消費者が打消し表示の存在を連想するか否かという点に加えて、(ⅱ)どの程度スクロールする必要があるのかという点等も勘案される5
そのため、例えば、強調表示が表示されている位置から1スクロール下に打消し表示が表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、別の画面に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法問題となるおそれがある。

⑸ Web 広告(スマートフォン)において問題となる表示方法

スマートフォンは PC 等と比べて画面のサイズが小さいため、①Web ページの表示内容全体を見るために、最初の画面から下に何画面分もスクロールする必要がある縦に長いページの構成になっていたり、②ハイパーリンクを用いてリンク先に情報が表示されたり、③一般消費者が画面をタップした際に表示されるアコーディオンパネルに情報が表示されたりするといった特徴がみられる。
また、スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、(ⅰ)自身の関心のある情報だけを拾い読みする傾向がある、(ⅱ)大きな文字や画像等の目立つ表示に注意が引き付けられる、(ⅲ)Web ページの下にスクロールした場所にある表示を見落としやすい、(ⅳ)情報を拾い読みする際、その時点で見ている画面からスクロールして、離れた別の画面の表示内容を確認しないときがある、(ⅴ)関心のある表示を見つけると、その部分だけを見てハイパーリンクの文字列をタップし、リンク先からリンク元に戻って表示内容を確認しないときがあるといった特徴がみられる。
一般消費者が Web ページをスクロールしながら表示に接する際は、認知心理学の観点から、画面に次々と表示される異なる内容の情報を読んで解釈することによって、作業記憶が失われることがあるといわれており、スクロールしている間に他の表示に注意が引き付けられるときは、その時点で見ている画面の表示内容と、離れた別の画面の表示内容との関連性を認識できずに、離れた別の画面までスクロールして戻ることも困難になる。以上のスマートフォンの特徴を踏まえると、景品表示法上の考え方に加えて、一般消費者が適切に強調表示と打消し表示の両方を認識できるようにするために求められる表示方法を示す必要があると考えられることから、以下のとおり整理した。

5 Web 広告の打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるか否かを判断するに当たっては、当該 Web 広告の構成(強調表示を見た一般消費者が打消し表示の場所まで誘導されるような工夫がなされているか)についても、勘案されると考えられる。

ア アコーディオンパネルに打消し表示が表示されているか
スマートフォンの Web ページ上でアコーディオンパネルに打消し表示が表示されており、初期状態では打消し表示が画面に表示されていない場合、一般消費者は打消し表示が表示されているアコーディオンパネルのラベルをタップしなければ、打消し表示の内容を認識できない。アコーディオンパネルに打消し表示を表示する場合、ラベルの表示を見た一般消費者がアコーディオンパネルに重要な情報が表示されていることを理解できなければ、タップする必要性を認識できずに打消し表示を見落とすおそれがある。
そのため、例えば、打消し表示が表示されたアコーディオンパネルのラベルに抽象的な表現等が用いられている場合であって、他の表示によってもラベルをタップする必要性に気付かないものであるときは、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

○求められる表示方法
スマートフォンでは、自身の関心のある情報だけを拾い読みしやすい という特徴があり、アコーディオンパネルの表示方法を理解していても、自身の関心のある情報と認識しなければ、ラベルをタップしない者も一定数存在する。また、スマートフォンでは、離れた別の画面に表示されている情報の関連性を把握しにくくなるという特徴があることからも、通常の画面に強調表示を表示した上で、アコーディオンパネルに打消し表示を表示する際は、強調表示を見た者がすぐに重要な情報があること を認識できるように、強調表示に近接した箇所にラベルを配置するなどして、強調表示とアコーディオンパネルに表示された打消し表示とが一体として認識されようにすることが求められる。
また、アコーディオンパネルの表示方法について知らない者も一定数 みられることからも、アコーディオンパネルに表示された打消し表示の内容を、通常の画面において強調表示に隣接した箇所に表示することや、強調表示が画面に表示された際に、打消し表示の表示されたアコーディオンパネルのラベルを一般消費者が必ずタップするように工夫することが求められる。

イ コンバージョンボタンの配置箇所
スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、一般消費者が自身の関心のある情報だけを拾い読みしやすく、関心のある表示を見つけると、その部分だけを見てハイパーリンクの文字列をタップするときがあることからも、Web ページ上にコンバージョンボタンが表示されている場合、一般消費者が打消し表示に注意を向けることなくコンバージョンボタンをタップし、その時点で見ている画面からリンク先に移動することにより、打消し表示を見落とすおそれがある。
特に、コンバージョンボタンが表示された画面から下にスクロールしないと打消し表示が表示されない場合等、コンバージョンボタンから離れた別の画面に打消し表示が表示されている場合であって、別の画面に重要な情報が表示されていることを一般消費者が認識できないときは、その時点で見ている画面でコンバージョンボタンをタップし、コンバージョンボタンと離れた別の画面に表示された打消し表示を見落とすおそれがある。
そのため、例えば、コンバージョンボタンが強調表示と同一画面に表示されているのに対し、打消し表示は強調表示から離れた別の画面に表示されている場合であって、強調表示を見てコンバージョンボタンをタップしようとした一般消費者が、他の表示によっても打消し表示に気付かないときは、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

○求められる表示方法
強調表示と共にコンバージョンボタンを用いる際、例えば、強調表示を見た一般消費者が、強調表示の前後の文脈の中で打消し表示の存在を認識できるように表示することが求められる。スマートフォンでは、画面のサイズが小さいため、同一画面に強調表示と打消し表示を表示できないような場合は、例えば、画面上に強調表示が表示された時点や、強調表示の表示された画面からスクロールした時点で、一般消費者が特に操作等を行うことなく打消し表示を認識できるようにすることが有効であると考えられる。

ウ スマートフォンにおける強調表示と打消し表示の距離
スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、スクロールしながら画面に次々と表示される情報を読む際、記憶していた情報を途中で忘れてしまうことや、他の表示に注意が引き付けられることによって、その時点で見ている画面の表示内容と、離れた別の画面の表示内容との関連性が把握できなくなることがあると考えられる。また、その時点で見ている画面の表示内容と、離れた別の画面の表示内容との関連性が把握できない場合、一般消費者は、表示されている画面からスクロールして、離れた別の画面まで戻り、当該画面に表示された内容を確認しないことがあると考えられる。
これらのことから、たとえ、強調表示の近くに打消し表示の存在を連想させる「※」等の記号が表示されていたとしても、強調表示から離れた別の画面に打消し表示が表示されている場合であって、強調表示からスクロールしている間に他の表示に注意が引き付けられるときは、一般消費者は打消し表示に気付かなかったり、打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、離れたところに表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できなかったりすることがあると考えられる。特に、スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、一般消費者が自身の関心のある情報だけを拾い読みするといった特徴があり、スクロールしている間に目立つ表示が表示されている場合や、目立つ表示と同一画面に打消し表示が表示されている場合には、一般消費者は打消し表示に注意が向かないときがあると考えられる。
そのため、例えば、強調表示の近くに打消し表示の存在を連想させる「※」等の記号が表示されていたとしても、強調表示から離れた別の画面に打消し表示が表示されている場合であって、他の表示によっても打消し表示に気付かないときは、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。また、同様の場合において、打消し表示があることに気付くことのできる表示であったとしても、当該打消し表示が離れたところに表示された強調表示に対する打消し表示であることを、他の表示によっても認識できないときは、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
また、強調表示に隣接した箇所に打消し表示が表示されていたとしても、他の目立つ画像等に注意が引き付けられる場合や、打消し表示の文字の大きさ(後記エ)、打消し表示の文字とその背景の色や模様(後記オ)等が適切でない場合、他の表示によっても打消し表示に気付かないときは、景品表示法上問題となるおそれがある点に留意する必要がある。

○求められる表示方法
スマートフォンは最初の画面から下に何画面分もスクロールする必 要がある縦に長いページの構成になっている場合があり、一般消費者が 強調表示と打消し表示の両方を適切に認識できるように表示する上で、強調表示と打消し表示の距離は重要な要素となる。スマートフォンでは、その時点で見ている画面の表示内容と、離れた別の画面の表示内容との 関連性が把握しにくいことからも、強調表示に隣接した箇所に打消し表 示を表示することが求められる。
また、強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示する際も、目立つ画像が同一画面に表示されている場合や、打消し表示の文字が小さい場合等は、一般消費者が打消し表示の内容を認識できないときがあることからも、例えば、強調表示と同じ文脈の中で打消し表示を表示することにより、強調表示と打消し表示とが一体として認識されるようにすることが求められる。
他方、例えば、打消し表示の文字の量が多く、強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示できないような場合は、例えば、画面上に強調表示が表示された時点や、強調表示の表示された画面からスクロールした時点で、一般消費者が特に操作等を行うことなく打消し表示を認識できるようにすることも有効であると考えられる。

エ スマートフォンにおける打消し表示の文字の大きさ
スマートフォンでは、画面に指で触れて文字を拡大させることが可能であるが、一般消費者はスクロールしながらWebページを読む際、途中で止まって文字をズームするとは限らない。そのため、例えば、一般消費者が打消し表示を見落としてしまうほど文字が小さい場合、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。
また、打消し表示は、強調表示といわば「対」の関係にあることから、強調表示から一般消費者が受ける印象が強いほど、それに対する打消し表示はより明瞭に行う必要がある。強調表示と打消し表示の両方を一般消費者が認識するためには、強調表示と打消し表示のそれぞれの文字の大きさに加えて、強調表示と打消し表示の文字の色、打消し表示の配置箇所等にも留意する必要がある。
そのため、例えば、スマートフォンで強調表示に隣接した箇所に打消し表示が表示されていたとしても、大きな文字の強調表示に注意が引き付けられる場合であって、他の表示によっても強調表示よりも小さな文字の打消し表示に気付かないときは、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

○求められる表示方法
スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、一般消費者が自身の関心のある情報だけを拾い読みをする特徴があることからも、スマートフォンで打消し表示を表示する際は、同一画面にある他の表示と比べても、打消し表示がより注意を引き付ける文字の大きさにすることが求められる。

オ スマートフォンにおける打消し表示の文字や背景の色や模様
スマートフォンにおいては、例えば、白色の背景に、対照的な黒い文字で打消し表示を行った場合であっても、小さな文字の打消し表示を見にくいと感じる者が一定数いることに注意する必要がある。
また、画像を背景に打消し表示の文字を表示する場合、画像の背景の色彩が入り組んでいるようなときは、打消し表示の文字と背景の区別がつきにくく、一般消費者は打消し表示に気付かないおそれがある。
さらに、たとえ、打消し表示の文字と背景の区別がつきやすいように表示されていたとしても、スマートフォンにおいては、一般消費者が自身の関心のある情報だけを拾い読みする特徴があることからも、より印象の強い色の他の表示に注意が引き付けられ、目立たない色で表示された打消し表示に注意が向かないときがある。
そのため、例えば、打消し表示の文字の色が背景の色と対照的であったとしても、画面全体の中でより印象に残る目立つ色で強調表示が表示されている場合であって、他の表示によっても目立たない色で表示された打消し表示に気付かないものであるときは、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないと考えられる。こうした表示方法により、商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

○求められる表示方法
スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、強調表示と同じ背景色になっていたり、同じ枠内にあったりする表示内容は、強調表示に関連する情報として認識されることからも、打消し表示を表示する際は、前記⑶のとおり強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示するとともに、例えば、強調表示と打消し表示の文字の色や背景の色を統一することにより、強調表示と打消し表示とが一体として認識できるようにすることが求められる。

第3 打消し表示の表示内容について

1 基本的な考え方

打消し表示の内容が一般消費者に正しく認識されるためには、適切な表示方法で表示されていること、一般消費者が打消し表示の内容を理解できるように分かりやすく表示されていることが必要である。

2 問題となる打消し表示の表示内容

⑴ 例外型の打消し表示
商品・サービスの内容や取引条件を強調した表示に対して、何らかの例外がある旨を記載している打消し表示について、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は例外事項なしに商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示及び打消し表示から商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

⑵ 別条件型の打消し表示
例えば、割引期間や割引料金が強調される一方、割引期間や割引料金が適用されるための別途の条件が打消し表示に記載されており、一般消費者 が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は別途の条件なしに強調された割引期間や割引料金で商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示及び打消し表示から商品・サービスの取引条件について実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
特に、適用条件や期間の異なる複数の割引が存在する複雑な料金体系の契約において、全ての割引が適用された割引料金とともにある特定の割引の期間だけが強調される一方、割引に関する別途の条件が打消し表示に記載されており、打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は、強調された特定の期間、全ての割引が適用された割引料金で利用できるという認識を抱くと考えられるので、景品表示法上問題となるおそれがある。
また、例えば、定期購入契約において、初回の価格の安さ等が強調される一方、解約条件が打消し表示に記載されており、打消し表示を読んでも その内容を理解できない場合、一般消費者は解約条件について理解できず、契約期間内の総額費用について誤認すると考えられる。こうした強調表示及び打消し表示から商品・サービスの取引条件について実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

⑶ 追加料金型の打消し表示
「全て込み」などと追加の料金が発生しないかのように強調している一方、それとは別に追加料金が発生する旨が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は当該価格以外に追加料金が発生しないという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示及び打消し表示から商品・サービスの取引条件について実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

⑷ 試験条件型の打消し表示
表示を行うに当たっては、表示された効果、性能等(ここで「表示された効果、性能等」とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果、性能等であることに留意する必要がある。)が、試験・調査等によって客観的に実証された内容と適切に対応している必要がある。
打消し表示として、試験・調査等によって客観的に実証された内容が書 かれていたとしても、打消し表示の内容が外来語、業界独自の用語、技術 に関する用語などの専門技術的なものを含み、一般消費者が打消し表示の内容を理解できないことにより、表示された効果、性能等と試験・調査等によって客観的に実証された内容とが適切に対応していないことを理解できない場合、一般消費者は強調されているとおりの商品の効果、性能等 があるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示及び打消し表示から商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
実際には、商品に表示された効果、性能等がないにもかかわらず、商品ではなく成分について試験を行った結果に基づく表示を行うことにより、一般消費者は当該商品について表示された効果、性能等があるという認識を抱く場合がある。この場合、一般消費者が理解できないような試験の内容や条件等を記載したときは、一般消費者は表示された効果、性能等が成分に関するものであることを正しく理解できずに、当該商品について表示された効果、性能等があるという認識を抱くと考えられるため、商品の内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に認識されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
例えば、商品に効果、性能があるかのような強調表示に対し、打消し表示として、商品に含まれる成分に効果、性能があるだけで、実際の商品には効果、性能がない旨を表示する場合のように、強調表示と打消し表示とが矛盾するような場合は、一般消費者に誤認され、景品表示法上の問題となるおそれがある。試験結果等の表示により一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該商品の効果、性能等に適切に対応した表示を行う必要があり、成分について試験を行った結果に基づく表示を行う際は、試験の内容や条件等を分かりやすく表示し、当該成分の効果、性能等ではなく実際の商品の効果、性能等を一般消費者が正しく理解できるようにする必要がある。

第4 体験談を用いる場合の打消し表示について

1 体験談に関する景品表示法上の考え方

体験談については、「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について」(昭和 60 年公正取引委員会通知)、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成 28 年消費者庁)等において、体験談をねつ造する場合や一部の都合の良い体験談のみを引用する場合等、体験談を不適切に使用する場合は、不当表示に当たるおそれがあるとしている。
打消し表示の実態調査結果から、実際に商品を摂取した者の体験談を見た一般消費者は「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識を抱き、「個人の感想です。効果には個人差があります」、「個人の感想です。効果を保証するものではありません」といった打消し表示に気付いたとしても、体験談から受ける「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識が変容することはほとんどないと考えられる。また、広告物は一般に商品の効果、性能等を訴求することを目的として用いられており、広告物で商品の効果、性能等を標ぼうしているにもかかわらず、「効果、効能を表すものではありません」等と、あたかも体験談が効果、性能等を示すものではないかのように記載する表示は、商品の効果、性能等を標ぼうしていることと矛盾しており、意味をなしていないと考えられる。
このため、例えば、実際には、商品を使用しても効果、性能等を全く得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合、打消し表示が明瞭に記載されていたとしても、一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられるので、商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
なお、試験・調査等によって客観的に実証された内容が体験談等を含めた表示全体から一般消費者が抱く認識と適切に対応している必要があるところ、商品の効果、性能等を標ぼうしている広告物の中には、(ⅰ)効果、性能等を示す表示(例:「この商品を飲めば5kg 痩せます」という表示)に加えて体験談を用いる場合と、(ⅱ)具体的な効果、性能等を明示せずに、体験談を含めて表示全体として効果、性能等を示している場合の2種類があるが、いずれの場合であっても、体験談が不適切に使用されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあることに変わりはない。
また、一般消費者が表示から受ける認識は表示全体で判断されるところ、体験談及び打消し表示の内容にかかわらず、体験談以外の効果、性能等を示す表示によって、商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認される場合は、景品表示法上問題となるおそれがある。そして、このような場合における体験談は、一般消費者が抱く実際のもの等よりも著しく優良との誤認を強めているものと考えられる。この場合、実際に効果、性能等があった者の体験談が用いられていたとしても、景品表示法上問題となるおそれがあることに変わりはない。

2 体験談を用いる場合の留意点

体験談を用いる際は、体験談等を含めた表示全体から「大体の人に効果がある」と一般消費者が認識を抱くことに留意する必要がある。
また、試験・調査等によって客観的に実証された内容が体験談等を含めた表示全体から一般消費者が抱く認識と適切に対応している必要があるところ、上記のような認識を踏まえると、実際には、商品の使用に当たり併用が必要な事項(例:食事療法、運動療法)がある場合や、特定の条件(例:BMIの数値が 25 以上)の者しか効果が得られない場合、体験談を用いることにより、そのような併用が必要な事項や特定の条件を伴わずに効果が得られると一般消費者が認識を抱くと考えられるので、一般消費者の誤認を招かないようにするためには、その旨が明瞭に表示される必要がある。

○求められる表示方法
体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(ⅰ)被験者の数及びその属性、(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべきである。

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